自宅の畑ひとつ隔てたところの隣家では、夫婦喧嘩が絶えなかった。週末になると奥さんの怒声が聞こえてきたものだ。何年も変わらない風情だった。
ある時期を境にそれが聞こえてこなくなった。最近のことだ。どうしたものかと家人に聞いてみれば、引っ越していったのだという。いよいよ奥さん出て行ったかと思ったが、意外にも家族全員で引っ越していったらしい。
引っ越すに至った経緯は知らないけれど、比較的若い夫婦には田舎暮らしはストレスがたまるかもしれんし、例えば子育てするにも近隣の施設があまりに乏しい。怒声から想像できるのはそんなことだった。休日に旦那がゴルフに出かけようとすると大騒ぎになっていたし、子供もそろそろ小学生にあがるところだったしね。
その家は夫婦の親が提供したものらしいのだが、現在は借家になり住人を募集している。貸主はその夫婦だろう。ちなみに同じ敷地にはその夫婦の親戚の家もある。そういうのは暮らしにくいかもしれない。
なかなか激動の隣家だが、たぶん、どの人の言い分も間違ってはいないのだろうと思う。